【ICT活用方法】特別支援教育におけるICT活用の考え方【小中高校/解説/文部科学省】


【ICT活用方法】特別支援教育におけるICT活用の考え方【小中高校/解説/文部科学省】 5 | ICT教育

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文部科学省が提示した「特別支援教育におけるICTの効果的な活用」についてご紹介いたします。

特別支援教育におけるICTの効果的な活用

https://www.mext.go.jp/content/20200911-mxt_jogai01-000009772_18.pdf

特別支援教育におけるICT活用

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障害のある子供たちは、一人一人の教育的ニーズを把握し、適切な指導及び必要な支援を行う必要があります。

このため、障害の状態等に応じ、特別支援学校や特別支援学級通級による指導などで、特別の教育課程の編成や専門的な知識、経験のある教職員からの指導や支援などが行われています。

ここで大事なのが特別支援教育は発達障害のある子供も含めて障害により特別な支援を必要とする子どもが在籍する全ての学校において実施されるものであるということ。また「全ての学校」「全ての学級」「全ての教職員」で実施されるということが重要となります。

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特別支援教育における ICT 活用の視点

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「視点1」は、障害の有無や学校種を超えて全ての児童生徒に共通しています。 

視点2」は、「障害による学習上又は生活上の困難さを改善克服するために ICT を活用する視点」であり、まさに特別支援教育の教育課程の要ともいえる自立活動の視点となります。

簡単に申し上げれば、障害により学習する上での困難に対して障害のない子供と同じように学習できるように ICT や補助具を効果的に活用するという考え方です。

昨今のこの分野における ICT に関連する技術革新は目覚ましく、個々の障害の状態等に応じて授業においてどう活用し実施していくかが問われています。

そこで、特別支援学校学習指導要領では、各教科の指導にあたっての配慮事項として障害種ごとにそれぞれの障害の状態や特性等に応じて、コンピュータ等の情報機器を有効に活用し、指導の効果を高めるようにすることを共通的に明記しました。

その際、ただ単に活用するだけでなく、指導方法工夫すること指導の効果を高めることを求めています。

特別支援教育における ICT 活用の必要性

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特別な支援を必要としている子供たちの数は増加傾向にあります。障害の状態や特性、それに伴う学びにくさが、多様かつ個人差が大きいために特別な支援が必要となります。

視覚障害や聴覚障害、肢体不自由など身体の障害により学習上の困難さがある場合は、それぞれの障害の特性に応じた ICT 機器や補助具の活用が必要となります。

例えば肢体不自由には「動きにくさ」という特性があります。そこで、手でキーボードに入力できないので、自由に動かせる眼球の運動によって入力する「視線入力装置」などを活用するということです。

また、知的障害や発達障害による学びにくさやコミュニケーションの困難さがある場合については、理解や意思表示を支援するために ICT 機器を活用することが有効となります。例えば、吃音や言語障害の場合、「話すことが苦手」という困難さがあります。

そこで発表の際、タブレットに話したいことを打ち込んでおき、タブレットの読み上げ機能により発表するという場面が想定できます。このような活用方法等は、通常の学級に通う子供の学習にも活用することも可能となります。

「視覚障害者」ICT教育

視覚障害教育ですが、人間は情報の約8割近くを視覚から得ていると言われています。視覚障害のある子供達は、この視覚からの情報を得ることができない・難しいという状況であることを前提となります。 視覚障害は、見えにくい状態である「弱視」、見えない状態である「盲」の二つに大別できます。それぞれ学習上の困難さも指導上の配慮事項も異なってきます。ここでは ICT 等がその困難さにどう関わっていくのかを見てみます。

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まず、弱視の子供の場合です。 0.1の視力や視野が欠けていても視覚的情報を得ることが可能ですが、私たちと同じように見ることはできません。

そこで、タブレットに装備されている表示変換機能、例えば文字拡大や白黒反転であるとか、最近ではフォント変換機能により、明朝体からゴシック体へといった比較的見やすいフォントの選択もでき、一人一人違う見え方に応じて自由に調整できるようになっています。また、同様にカメラ機能を用いて、板書事項を拡大させて手元でみたり、撮影して確認したりできます。この機能は、小さいものや動きの速いものを観察する際にも有効です。今後デジタル教科書のさらなる活用が期待されます

次に「見る」ことのできない「盲」の子供たちの場合です。全く見えない状態から、明暗を感じるなどその程度は様々ですが、基本的には視覚以外の聴覚・触覚等をフル活用して情報を得て学習を進めていきます。 まずは点字に代表される触覚による情報収集です。パソコンの上の文字情報を点字ディスプレイに表示させることができます。また聴覚活用では、音声読み上げソフトにより文字情報を音声で確認します。

この音声読み上げは、弱視の子どもたちにも有効です。これらのために端末の整備に加えて、視覚情報を他の情報に変換するための機器やソフトが必要となります。

「聴覚障害者」ICT教育

聴覚障害とは、周囲の音や話し言葉が聞こえにくい、又は聞こえない状態にあることを言います。障害の程度が軽くても、騒々しい場所で話されたり、もぞもぞした話し方をされたりすると内容を聞き取ることができません。

このため周囲の情報が得られず、コミュニケーションに困難が生じ、学習活動に支障をたすことになります。そこで、視覚的に情報獲得しやすい教材・教具やその活用方法を工夫することが必要です。

例えば電子黒板や大型ディスプレイの活用が有効です。聴覚障害の場合、手元の教科書を見ながら話を聞くことができません。

このため子供の視線を一箇所に集中させ、教師の顔と手話と電子黒板を同時に見ながら話を聞くことができるようにすると、効率的に授業を進めることが可能です。また、 廊下や特別教室に大型ディスプレイを設置し、連絡やお知らせを文字、写真等で提示する。すなわち、校内放送を「見える化」することで、視覚的な情報獲得が期待できます。緊急地震速報や非常ベルと連動させた画面表示も有効です。

また、小学校、中学校・高等学校で学ぶ子どもの場合、授業中の教師の話や友達の発表などが聞き取りにくかったり、新出語句など知らない言葉を正確に聞き取ることが困難だったりすることがあります。このため、教師の話をノートテイクしたり、パソコンで要約筆記したりすることが有効です。近年、遠隔(オンライン)によるパソコン要約筆記が広がりつつあります。 今後、より期待されるのは、音声を文字に変換するシステムや音声認識技術の向上です。

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小学校、中学校・高等学校で学ぶ子どもにとっては、授業中の話を文字変換することで学習内容の理解につながります。特別支援学校で学ぶ子どもにとっては、多様な日本語の表現に触れる機会となります。このため、端末の整備に加えて、音声認識と文字情報提供に関する技術およびシステムの確立、その向上、学校の通信環境の整備が必要です。

「知的障害者」ICT教育

知的障害のある児童生徒は、一般的に言葉を聞いたり、文字を読んだりして説明を理解することに困難さがあります。また抽象的な事柄を理解することにも困難さがあります。そこで、タブレット端末を活用することにより、こうした困難さを軽減することができます。

例えば、算数で学ぶ「三つ」「3番目」といった集合数と順序数の概念の違いは、多くの知的障害のある子どもにとって理解が困難な事柄のひとつです。

こうした場合においても、視覚化して学習できるアプリケーションを用いることにより理解できることがあります。「時間」を視覚化できることも、指導において大変有効です。 また、知的障害のある子供の多くは言葉による意思の表出が困難です。

本人の代わりに話してくれるアプリを活用することにより、言葉による意思の表出につながることもあります。

最後は教員側の話ですが、児童生徒の習得状況に合わせ、段階的に課題を用意することが容易です。

現状では、教員一人一人が担当してる子供の状況に合わせ、教材を自作しています。教員の業務負担の軽減という視点からも、こうした教材を大量に作成して共有できるようにし、教員が現場で適宜アレンジできるようにすることも期待されています。

「肢体不自由者」ICT教育

肢体不自由のある児童生徒は、身体の動きや意思の表出に困難があることから、個々に応じた入出力支援機器などの補助具や補助的手段を工夫することが重要です。

例えば、脳性まひ等による指先の震え等により、キーボード入力に困難がある場合は、市販のキーボードに、キーガードを装着して入力したり、五十音表を画面に表示して文字を選択して入力したりすることが考えられます。

また、重複障害のある子供の場合は、一人一人の微細な動きや粗大的な動きに合わせ、操作しやすいスイッチを選択する必要があります。昨今のコンピュータ等の周辺機器の発展により、視線入力支援機器が比較的安価で購入できるようになってきました。

これらを有効に活用し始めている例を説明します。人工呼吸器、酸素療法などを必要とする児童です。虹という漢字を視線で書いています。また、視線で絵を書いて作品展に出展するなどの事例が多くなっています。今後は、家庭訪問学級等においても活用され、教育活動の充実が期待されます。 遠隔合同授業では、少人数集団での学びのデメリットを学校や地域を超えた遠隔合同授業による協同学習により多様な考えや意見に触れ、自分の考えを確立していくなどの効果が期待されます。

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「病弱者」ICT教育

病気を抱えている児童生徒は、病気や治療のため身体の動きや活動の動きが制限されることが多いため、通学して授業を受けることが難しい場合があります。

授業配信ですが、これまでも学校と病室をつないだ遠隔教育により、教育の機会の確保及び充実に努めてきましたが、通信ネットワークが高速大容量化され病院でも使用できるようになることで、画像や音声が途切れることなく同時双方向型での授業配信が可能となります。

また、治療や体調の関係で同時双方向型での授業を受けることができない場合であっても、体調の良い時にその授業を見ることができるオンデマンド型の普及が期待されます。

自習教材ですが、子供によっては病院の無菌室で闘病生活を送ることがあります。無菌室では、紙の教材では消毒が難しいために持ち込むことができない場合がありますが、タブレット端末は消毒が可能であるため病室でも扱うことが可能です。

入院等が続き、学習の遅れがある子供たちには個々の理解度や学習進度に合わせて学習を進めることが可能です。

「発達障害」ICT教育

発達障害のある子どもにとっての ICT 活用の最大のメリットは、現在、通常の学級で一般的に行われている「教科書を声に出して読む」「紙のノートに鉛筆で書く」「声に出して発表する」「本を読む」などの苦手な方法に縛られることなく、多様な学びの方法の中から選択し授業に参加することができるということです。

児童生徒の実態に応じて、これまで話してきた五つの障害に対する活用方法が有効であり、視覚障害の文字の拡大やフォントの変更、聴覚障害の会話の見える化等の活用も非常に効果的だと考えます。

読み上げ機能の活用による内容理解の支援、書き込み機能の活用による表出の支援が可能です。他にも思考をまとめることが苦手な子供に対して、ソフトやアプリを活用したり、読み書き等の指導アプリ等をダウンロードして授業中や休み時間、家庭等において活用したりすることもできます。

発達障害のように外見からは障害の有無が分かりにくい障害のある子供達について、どのようなことに困っているのか、その背景・要因をより丁寧に把握し理解することが必要となります。また、これまで一般的に行われてきた教師の指導や支援の方法の見直し、多様な障害の状態に応じたソフトやアプリの選択や活用が必要となります。

一方、逆にタブレットや PC を使わなければならないという方法の画一化は、発達障害のある子どもの学びを妨げる要因となります。 PC やタブレットの活用は、「子どもの学びを充実させる多様な方法の選択肢である」ということを確認いただきたいと思います。